個人情報を抜き出す流れ
アプリやWebサービスのAPI、BIツール、既知の脆弱性を突いて、会員情報を大量に持ち出します。業務は動いたまま、利用者の情報が漏れます。
2026年9月末から、国内の企業や団体による不正アクセス・情報漏えいの公表が相次いでいます。公表された事実をもとに攻撃を整理し、法人と個人がそれぞれ今やることを図でまとめました。本ページは2026年10月8日時点の情報に基づいています。調査中の事案が多く、続報で内容が変わる可能性があります。
JPCERT/CCは10月8日の注意喚起で、9月前後から相次ぐ個人情報の漏えいを、ランサムウェアなどの散発的な不正アクセスとは別の攻撃類型として取り上げました。
JPCERT/CCの注意喚起、各社の公表、警察庁資料をもとに本ページで整理。
アプリやWebサービスのAPI、BIツール、既知の脆弱性を突いて、会員情報を大量に持ち出します。業務は動いたまま、利用者の情報が漏れます。
VPN機器や盗まれたパスワード、委託先から侵入し、ランサムウェアで業務やサービスを止めます。警察庁によると、2026年上半期のランサムウェア被害の報告は半期として過去最多で、被害組織へのアンケートでは侵入経路の約5割をVPN機器が占めました。
10月7日には、IDCフロンティアが、IDCFクラウド東日本リージョン1の一部システムの障害について、第三者によるランサムウェア攻撃が原因と公表しました。影響範囲は同サービスを契約する495の企業・自治体で、侵入経路などは調査中としています。
SNS上では攻撃者によるものとされる声明が共有され、スナップショット554,153個とバックアップ41.5PBを破壊したなどと主張しています。これは攻撃者側の主張で、確認された被害ではありません。身代金の額や連絡先、データを持ち出したという主張は確認されていません。
本ページで扱った2024年以降の公表事例を並べると、攻撃の入口や被害の及ぶ範囲が、1社の機器から、委託先やアプリ、多くの会社が共有する基盤へと広がってきたことが分かります。2026年10月のクラウド基盤の事案は被害の範囲を示すもので、侵入経路は調査中です。これは本ページによる整理です。
本ページで扱った2024年以降の公表事例による整理。最後のクラウド基盤は被害の範囲を示し、侵入経路は調査中。
入口が外側へ広がるほど、1つの事案が複数の企業・自治体や多数の利用者に波及します。
JPCERT/CCが挙げた手口は3つあります。既知の脆弱性や管理の不備を突くもの、アプリを解析してAPIを直接操作するもの、BIツールMetabaseの脆弱性を悪用するものです。このうちAPIを悪用する流れを図にしました。
JPCERT/CC 注意喚起 JPCERT-AT-2026-0030 をもとに作図。
別のシステムへの侵入で盗んだAPIキーを使う手口も確認されており、被害が連鎖する可能性があります。注意喚起は、攻撃者の正体やAIの利用には触れていません。
攻撃の技術は、金銭目的の犯罪者と国家の関与が疑われる攻撃者の間で共有されています。手口だけでは区別できないため、動機で分けて見ることが大切です。
例示。国家の欄の帰属は、警察庁などが公表したもの。個別の事案の動機を判定するものではない。
身代金の額と連絡先が示される、盗んだデータで脅す・売る・詐欺に使う、お金を払いそうな相手を選ぶ。割に合わなくなれば別の標的へ移ります。
要求が無い、払っても戻らない、データが表に出ないまま集められる、政府やインフラなど象徴的な相手を選ぶ。費用対効果では止まりません。
これは個別の事案の動機を判定する基準ではなく、公開情報を読むときの一般的な観点です。IDCFクラウドの障害、8月から確認されている個人情報を狙った攻撃、9月23日のJ:COMの広域障害は、いずれも公表資料で動機が示されていません。
動機が違えば、備えも変わります。金銭目的の攻撃には、強い認証や利用上限などで割に合わなくする対策が効きます。政治目的の攻撃は費用対効果では止まらないため、止まっても困らない備えが要ります。
被害が起きる時点で本人が操作していなくても、お金や情報を取られる型があります。入口は主に、本人が使っていたサービスの側や、過去に漏れた本人の情報にあります。
入口は本人ではなく、サービスの側と過去に漏れた情報にある。
通販サイトなどからカード情報が漏れ、抜かれた番号で勝手に決済されます。日本クレジット協会の調査では、2026年4〜6月のクレジットカード不正利用被害額は107.7億円で、そのうち番号盗用が100.1億円でした。
漏れた個人情報で携帯電話のSIMを再発行させ、SMSの認証を通ります。楽天証券とイオン銀行が、SIMスワップへの注意喚起を公表しています。
漏れた免許証などの画像で、本人名義の口座開設や携帯契約をされます。
あるサービスから漏れたIDとパスワードで、別のサービスにログインされます。
攻撃者がサービスの内部の機能を直接操作し、アカウントの権限を変えたり不正なアカウントを作ったりする手口を、JPCERT/CCが注意喚起しています。
サービス側からのカード情報の漏えいや、本人確認書類の悪用は、本人が認証を強くするだけでは防ぎにくい型です。被害の上限を下げ、早く気づき、預けるものを減らすことが個人の手段になり、根本の対策は法人の側にあります。
2026年に国内で公表された主な漏えい21件について、漏れた、またはその可能性がある情報の種類を本ページで数えました。氏名・メールアドレス・電話番号が多くの事案で漏れており、別々の漏えいをつなぐ手がかりになります。
各社の公表内容をまとめた報道・まとめ記事の記載に基づく本ページの集計。各社の一次発表との照合はしていない。
氏名・住所・生年月日・本人確認書類の画像は、一度漏れたら取り戻せません。変えられる情報をすぐ変え、変えられない情報を使った手続きに気づける仕組みを持つことが要ります。
ワンタイムパスワードは、届き方によって強さが違います。
塗りつぶしは防ぎやすい、実線の枠は破られやすい、点線の枠は条件しだいであることを示す。
SIMスワップで電話番号ごと奪われると、以後のコードがすべて攻撃者に届きます。止められるなら止めます。
メールアカウントを乗っ取られると奪われます。止められるなら止め、残すならメールアカウント自体を強く守ります。
手元のスマートフォンの中で作られ、電話番号やメール経由で届く方式ではありません。電話番号やメールアカウントの乗っ取りによる被害は受けにくく、SMSやメールより強い方式です。クラウド同期を切れる認証アプリを選び、スマートフォン自体と回復手段も守ります。
正規のサイトにひも付いた鍵で認証するため、偽サイトでは使えず、中継に強い方式です。同期型のパスキーは、保管しているGoogleやAppleのアカウントを守ることが前提になります。
3つのコードに共通する弱点は、偽サイトにコードを入力するとその場で中継されることで、いずれもフィッシングへの耐性はありません。証券口座の乗っ取りはこの手口で、日本証券業協会は2026年3月、パスキーなどへの切り替えを呼びかけました。
英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)の整理によると、2022年のロシアによるウクライナ侵攻では、侵攻の約1か月前にデータを壊すマルウェアが使われ、侵攻が近づくにつれて政府や銀行へのDDoS攻撃が起き、侵攻の直前には衛星通信サービスへの攻撃がありました。
英国NCSCの整理による。日本の状況を予測するものではない。
類似する要素があるだけで、国家の関与や軍事衝突を予測できるものではありません。そのうえで、2026年10月8日時点の国内の状況をこの型に照らすと、次のとおりです。
親ロシア派のハクティビスト集団NoName057(16)が、2026年2月と8月に日本の政府・自治体・企業へのDDoS攻撃を主張しています。セキュリティ企業のCheck Pointは、データの窃取や改ざんは確認されていないとしています。2026年版の外交青書は、中国軍の日本周辺での活動の拡大・活発化や、東シナ海・南シナ海での威圧的な活動を記しています。
J:COMの広域障害は、攻撃かどうかが調査中です。IDCFクラウドの障害は、金銭目的のランサムウェアなのか、データを壊すことが目的なのか、公表された情報からは判断できません。
サイバー攻撃による電力や金融システムの停止、日本周辺での人為的な海底ケーブルの切断は、本ページで確認した公表資料・報道の範囲では見当たりませんでした。
現時点で、より深刻な事態の前兆と判断できる材料はそろっていません。ただし、調査中の事案の続報によって見方が変わる可能性はあります。どちらの場合でも、止まっても困らない備えは同じように役立ちます。
インターネットに出ているVPN、BIツール、管理画面を一覧にし、不要なものは公開を止めます。
悪用が確認された脆弱性を修正し、そのうえで機器の管理者・VPNのパスワードを変えます。
アプリにキーを埋め込んでいないか、内部の機能にもアクセス制御があるか、リクエスト数に上限があるかを点検します。
送金や振込先の変更は、メールやチャットとは別の経路で確認してから実行します。
使っているクラウドやSaaSが止まったら何の業務が止まるかを書き出し、バックアップを別の事業者の基盤にも置いて、実際に戻せるかを試します。
個人情報が漏れたときの報告手順と、顧客向けの案内を平時に用意し、不要になったデータは消します。
SMSで認証しているサービスを、利用できる場合は認証アプリかパスキーに切り替え、切り替えた後の回復手段も確認します。携帯会社でSIM再発行時の追加確認を設定します。
証券・銀行は、利用できる場合はパスキーにし、振込限度額を普段の額まで下げ、取引とログインの通知をオンにします。
パスキーを保管しているGoogleやAppleのアカウント自体を、パスキーか物理セキュリティキーで守ります。新しい端末が追加されたといった通知は必ず確認します。
漏えいを公表したサービスを使っていたら、そのパスワードと、使い回していた先のパスワードを変えます。
カードの利用通知を即時にし、利用上限を下げます。使わないサービスに登録したカードを外します。
本物の注文や予約の情報が書いてあっても、届いたリンクは開かず、公式アプリか自分のブックマークから確かめます。
写真や書類は、別の会社のクラウドと手元の外付けディスクの2か所以上に置きます。
家族、特に親の世代と、警察を名乗る詐欺や投資詐欺の手口を共有します。警察はSNSやビデオ通話で連絡せず、送金も求めません。