違法・脱法・合法の間に広がる設計領域
事業設計において、「合法か違法か」という二値的な判断だけでは、本質的な競争優位を見逃してしまいます。合法領域の中には、実は広大な設計の余地が存在しているのです。
現状の課題
多くの経営者が陥る思考の罠
極端な二値判断
判断基準が「違法か合法か」に極端に寄っており、その間にある設計余地を見逃しています。
脱法への過剰反応
「脱法」という言葉に強い拒否反応を示し、合法領域内の選択肢まで排除してしまいます。
一択思考の罠
合法である限り選択肢は一つしかないと思い込み、設計の余地を自ら狭めています。
議論の早期終了
専門家から否定的なコメントが出ると、そこで議論を止めてしまい、代替案の検討ができません。
核心的な問い
今回扱う経営判断とは
判断のテーマ
事業設計において、違法・脱法・合法を二値的に切り分けるのか、それとも合法領域の中に存在する複数の設計選択肢を意識的に扱うのか。
なぜ重要なのか
「合法かどうか」だけで判断すると、合法領域内の差分が見えなくなり、設計余地が消え、結果として最も保守的な案しか残りません。これは思考の問題であり、法解釈の問題ではないのです。
これは法律の問題ではなく、思考の問題です。合法領域の中にこそ、競争優位を生む設計余地があります。
結論
違法と合法の間に広がる設計領域
違法と合法の間には、広大な設計領域が存在します。脱法とは本来、法の趣旨を無視し、形式だけをすり抜ける行為を指します。
違法
明確に法律に反する行為。論外です。
脱法
形式的には合法でも、法の趣旨を著しく損なう行為。
合法
法令・判例・ガイドラインの範囲内。
一方で、多くの実務判断は、合法でありながら、複数の設計余地を持つ領域に位置しています。問題は、合法=一択と誤解されやすい点にあります。
前提知識
用語と制約条件の整理
用語の定義
  • 違法:明確に法律に反する行為(不可)
  • 脱法:形式的には合法でも、法の趣旨を著しく損なう行為(長期的に高リスク)
  • 合法:法令・判例・ガイドラインの範囲内
実務上の制約
  • 法の解釈には幅がある
  • 規制は想定外の事業を前提にしていない場合が多い
  • 判断には社会的評価も影響する

問題は、合法=一択と誤解されやすい点にあります。実際には、合法領域の中に複数の設計選択肢が存在しているのです。
選択肢の比較
3つのアプローチとその特徴
A:合法性のみで判断
アプローチ
  • 合法ならOK
  • グレーは避ける
判断は簡単ですが、設計余地が完全に消失します。
B:最保守的な合法案
アプローチ
  • 形式的安全を最優先
  • 事業価値は最小化
批判されにくいですが、成長機会を失います。
C:合法領域内で設計
アプローチ
  • 法の趣旨に沿う
  • 影響範囲と条件を設計
価値を最大化できますが、設計負荷がかかります。
選択肢の詳細比較分析
選択肢Bは短期的な安心と引き換えに、長期的な競争力を失います。一方、選択肢Cは設計負荷がかかりますが、事業価値を最大化し、かつ可逆性も高いという特徴があります。
保守的な選択は、短期的な安心をもたらしますが、長期的には競争力の喪失につながります。
判断基準
どの選択肢を選ぶべきか
採用すべき条件
  • 合法領域内で競争優位を作りたい
  • 法務を翻訳装置として使いたい
  • 事業価値とリスクを同時に管理したい
不採用とすべき条件
  • 批判リスクを一切取りたくない
  • 設計よりも形式を優先したい

見直しトリガー
01
法解釈の更新
法解釈やガイドラインが更新されたとき
02
社会的評価の変化
社会的評価や世論が変化したとき
注意
よくある失敗パターン
1
脱法アレルギー
「脱法」という言葉に過剰反応し、設計可能な合法案まで排除してしまいます。これは最も多く見られる失敗パターンです。
2
一択思考
「合法=これしかない」と決めつけ、複数の選択肢を検討する機会を自ら放棄してしまいます。
3
法務主導化
法解釈が目的化し、本来の事業目的が消えてしまいます。法務は手段であり、目的ではありません。

これらの失敗パターンに共通するのは、思考停止です。合法領域の中にある設計余地を見ようとしない姿勢が、競争力の喪失を招きます。
到達目標
この記事を読んだ後の経営者の姿
視野の拡大
合法領域の中に選択肢があると理解できるようになります。
説明能力の獲得
脱法と設計の違いを明確に説明できるようになります。
法務との協働
法務に比較と条件提示を求められるようになります。
攻めの姿勢
合法の範囲で攻める発想を持てるようになります。

まとめ
違法は論外です。脱法は長期的に危険です。しかしその間には、経営が設計すべき広大な合法領域が存在します。そこに踏み込めるかどうかが、企業の成長を分けるのです。
合法領域の中にこそ、競争優位を生む設計余地がある。そこに踏み込む勇気が、企業の未来を決める。