海外展開で必ず起きるガバナンス事故
海外展開は戦略として正しいと理解していても、法務・会計・税務・人事・ITについて「現地に任せる/本社で統制する」の判断に迷っている経営者は多いです。事業スピードを優先し、現地の事情は現地が一番分かっているという理由で、設計を曖昧にしたまま進めてしまいます。
その結果、海外展開そのものではなく、ガバナンス事故の処理に経営資源を奪われるという事態が発生します。
経営判断
なぜ同じ事故が繰り返されるのか
なぜ海外展開では、どの企業でも似たようなガバナンス事故が繰り返されるのでしょうか。海外展開の失敗は、市場選定、プロダクト、現地人材よりも、ガバナンス設計の不在によって起きるケースが圧倒的に多いのです。
これは経営判断として極めて重要な問題です。適切な設計なしに進出すれば、必ず事故が発生し、本来の事業成長に集中できなくなります。

重要な視点
海外展開の成否は、ガバナンス設計の有無で決まります。
結論:事故は設計不在が原因
事故は偶発ではない
海外展開におけるガバナンス事故は、必然的に発生するものです。
本質的な原因
本社と現地の役割・権限・判断範囲を設計していないことが根本原因です。
正しい設計方針
段階的に統制を移行し、判断主語を明示することが解決策です。
これは海外展開を慎重にする話ではなく、事故を前提に防ぐ設計論です。適切な設計があれば、海外展開は博打ではなく、設計可能な成長戦略になります。
前提条件
海外展開の制約を理解する
海外市場で持続的に事業を拡張するという事業目的に対して、いくつかの制約条件が存在します。
法制度・商慣習の違い
法制度・商慣習・文化は国ごとに異なり、一律の対応は不可能です。
情報の非対称性
本社は現地の全情報を把握できず、現地判断が必要な場面が必ず生じます。
リスク感覚の差
現地は本社のリスク感覚を共有しきれず、判断基準にズレが生じます。
この前提に立てば、「任せる/縛る」の二択では必ず破綻することが分かります。
典型的なガバナンス事故
多くの企業で、次のような事故が繰り返し発生しています。これらは設計不在のまま権限委譲した結果です。
不適切な契約・支出・採用
現地での契約や支出、採用が本社基準から逸脱し、後から問題が発覚します。
ルールの形骸化
本社ルールが現地実態に合わず、形式的な運用となり機能しなくなります。
過剰統制への反動
問題発覚後、本社が過剰統制に走り、現地の機動力が失われます。
あるべきガバナンス設計
機能する企業では、海外展開を次の前提で設計しています。海外ガバナンスとは、固定モデルではなく、移行プロセスの設計なのです。
01
初期統制
初期は本社統制を強めに置き、リスクを最小化します。
02
検証と学習
検証と学習に応じて現地裁量を段階的に拡大します。
03
明確化
判断主語とエスカレーションラインを明確にします。
役割分担
本社と現地の経営判断分業
この線引きが曖昧なまま進出すると、ガバナンス事故は必ず起きます。明確な役割分担が成功の鍵です。
本社の役割
  • 事業目的と許容リスクを定義する
  • 判断権限の範囲を設計する
  • 事故時の最終責任を負う
現地の役割
  • 現地情報を基に判断材料を出す
  • 与えられた裁量内で実行する
  • 本社へ適切にエスカレーションする
よくある失敗パターン
これらはいずれも、海外展開を設計ではなくイベントとして扱った結果です。
丸投げ進出
スピード優先で設計を省き、現地に全てを任せてしまいます。
一律本社統制
現地の実情を無視した統制により、現地が機能しなくなります。
事故後過剰反応
問題発覚後、統制を急激に強め、現地の自律性を奪います。
設計可能な成長戦略へ
1
Before
海外展開を博打として捉え、事故対応に追われる状態
2
設計実施
ガバナンス設計を実装し、段階的統制を確立
3
After
海外展開が設計可能な成長戦略として機能
読了後の経営者は、海外展開をガバナンス設計の問題として捉えられるようになります。事故を想定した段階的統制設計ができ、本社と現地の健全な役割分担を構築できます。
海外展開は設計可能である
海外展開におけるガバナンス事故は、偶発的なものではありません。本社と現地の役割・権限・判断範囲を設計していないことが本質的な原因です。
正しい設計方針は、段階的に統制を移行し、判断主語を明示することです。これにより、海外展開は博打ではなく、設計可能な成長戦略になります。
ガバナンス設計の有無が、海外展開の成否を決定します。